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アクティブラーニング

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アクティブラーニング(Active Learning)とは、参加者を中心とした学修を指し、毛ケースメソッドがその代表的な手法として知られています。欧米ではアクションラーニング、もしくは参加者中心型学修(Participant Centered Learning)などと呼ばれ、高校生、大学生、社会人、企業幹部など幅広い層を対象とした教育手法として確立されています。

アクティブラーニングの最大の特徴は「正解がない」議論を教師がハンドリングしなければならない点です。正解・解答がある課題を教えることはそれほど難しいことではありません。しかしながらアクティブラーニングが目指すのは、正しい「知識」の修得ではなく、正解のない「姿勢」を修得することであって、そうした姿勢を議論の中から引き出す・導く能力が教員には求められます。

アクティブラーニング

アクティブラーニングが必要な理由

アクティブラーニングの必要性を主張する根拠としては「学修定着率」の図がよく用いられます。この図はエドガー・デール(オハイオ州立大学教育学教授)が、その著書である「Audio-Visual method in teaching【学習指導における聴視覚的方法】(1946)」で提唱した学習経験の分類図でして「経験の円錐:Dale's Cone of Experience」と呼ばれています。この分類図によると「座学」の講義が「読書」にすら定着率の点において負けてしまうという悲しい現実を描いています。もちろん対象となる参加者の年齢層、実務経験の有無、もしくは教育内容によってこの定着度の数字は変化しますので、絶対的な指標として考える必要はありませんが、教育を行う私達の感覚に一致するところが大きく、グループ討論、フィールドワーク、プレゼンテーションといったピラミッドの下に位置する「アクティブラーニング」が注目されています。

アクティブラーニング導入の意義

アクティブラーニングを実施することの最大の意義は「自分の言葉で語る」ことに他なりません。多くの教員が自分の教える科目では「絶対に無理」と考えがちですが、それは「正解」を教えなければならないという固定概念にとらわれているからでしょう。当然ながら知識もそれ自体重要ですが、知識のみを伝授するという作業が教師の仕事であるなら、AIにとって代わられてしまうでしょう。事実、予備校の世界ではビデオを活用したオンデマンド学習が普及しその傾向にあります。したがって、アクティブラーニングは正解のない議論を行うことであり、そのためには参加者による「予習」時間が必要となり、そこで議論に必要な知識を身につけることが求められるのです。

また、この予習に際しても参加者がバラバラに行っていては教室内でのアクティブラーニングは成立しません。まず共有情報として事前課題が教師によって事前に提示されることになります。参加者はこの事前課題を自分の視点で捉え、わからない部分は調べ、レポートにまとめ上げる作業を伴います。

アクティブラーニングの実施方法

アクティブラーニングとは「参加者中心型の学修」を意味しています。アクティブラーニングでは、先生の役割は講師(レクチャー)ではなく進行(ファシリテート)となります。したがって極論を言うと、ファシリテーターはあくまで中立的な立場から議論の進行をサポートを行うことになりますので、講義中に先生が自分自身の意見を主張したりすることはありません。また、教える側のみならず教わる側も意識を変えなければなりません。例を挙げますと...

  • 復習より予習を重視する
  • 教科書以外の教材を活用する
  • 正解探しを行わない
  • 定期試験ではなく講義貢献度を重視する

となります。現実問題として「教科書に沿って準備された順に板書しながら...」という従来の教育手法を変えるのは容易なことではありません。数人の教員が頑張って実施できるものでもありません。学校の運営システムに関する事案も変更しなければ実施できない要素もあります。しかしながら、社会が確実に教育現場に求めているのはこのアクティブラーニングであり、文部科学省もその導入を推奨しているのが日本の現実です。アクティブラーニングが導入出来ない大学は淘汰されていくでしょう。

アクティブラーニングの目標と手法

アクティブラーニングには「知識」ではなく「姿勢」を身につけるという目標もあり、そのために「主体的」に学修することが求められます。具体的にはアクティブラーニング講義では実際に起こった出来事に登場する主人公になったつもりで考え、クラスで議論するのです。この教材(ケース)に登場する主人公は何らかの意思決定に直面しており、もし自分が当事者であったなら与えられた状況でどう行動するかを考え、グループで議論し、クラスで話し合うことになります。したがって、アクティブラーニングで何の準備もしてこなければいきなり発言することは難しくなりますが、きちんと事前にケースを読んで準備してこれば、あとは発言するだけ。知識修得だけを目標として一方的に話を聞くわけではありません。

ケースメソッドでのアクティブラーニング

アクティブラーニングとは、一方向的な授業で知識を詰め込むインプット型の学修ではなく、グループ学修やディスカッションを活用したアウトプット型の学修スタイルを指します。具体的には、アクティブラーニングを採用する教育現場では「ケースメソッド」が多く採用されています。ケースとは主人公が何か実際の社会で悩んでいる状況を描いた一種の物語です。参加者はその主人公の立場で考え、判断するトレーニングを行い、自分の意見をクラス全体の中で発言する主体性を身につけることができるのです。参加者はリアルな教材に基づく課題を予習し、グループに分かれてどう対応すべきかを議論し、一人では思いつかなかった視点や考え方に気づくなど有意義な学修体験が可能となります。

フィールドメソッドでのアクティブラーニング

アクティブラーニングの一環で実施されるフィールドワークでは教室の中だけにとらわれず、「体験」と「発見」を通して課題を解決しながら学んでいきます。例えばアクティブラーニングを全面的に採用した「ビジネス行動観察」の講義では、参加者自身がキャンパスを飛び出して自分の目で消費者の行動を観察し、そこに潜む課題を発見するフィールドワークが組み込まれています。このようにアクティブラーニングの講義では実際に現場に赴き、対象となる人物やモノを観察し調査するフィールドワークを行う機会も多くあります。

大学で行われるアクティブラーニング

アクティブラーニングの手法として有名な「ケースメソッド」の特徴は、企業や組織の中で課題を抱える主人公のストーリーが描かれた「ケース」を利用する点にあります。参加者は予め与えられた質問事項(アサインメント)をもとに、予習を行い、自分がもしその主人公であればどう考え、どう行動するかを考え講義中に発言することになります。こうしたケースメソッドの場合には参加者は、学期毎の定期試験ではなく、各回の講義における授業貢献度を中心に評価されます。

アクティブラーニングに本格的に着手している名古屋商科大学では、文部科学省「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」(H24-H26)において、中部地域23大学とともに、学生が能動的に学びに参加する「アクティブラーニング」に産業界と共に取り組みました。その成果物として、『アクティブラーニング失敗事例ハンドブック』を2014年11月に公刊しました。このハンドブックは、アクティブラーニングに取り組むときに困難に遭遇するであろう典型的な場面について、その原因・行動・結果を紹介するとともに、これへの対策と知識化を行い、21の失敗事例についてまとめました。これからアクティブラーニングに取り組もうとしている方々にとっては、躓きの石になるだろう障害を上手に回避して、教育を設計するためのヒントが書いてあります。

アクティブラーニング失敗事例ハンドブック

アクティブラーニングの全面導入例

アクティブラーニング

全国的にも珍しくアクティブラーニングを全面的に推進する名古屋商科大学では、ビジネススクール教育で長年培ったノウハウを元に、日本で初めて100%アクティブラーニングで完結する「都心型コース」を2016年4月に開始しました。参加者中心型の「アクティブラーニング」による教育手法を通じて、ビジネスに本当に必要な実践力を身につけ、自らの考えを社会で提案できる「フロンティア人材」の育成にチャレンジしています。2017年度には2期生を迎え、さらに成熟度が増したアクティブラーニング講義が展開されています。

アクティブラーニング実施に必要な要素

アクティブラーニングで講義を行う際に必要なものは、以下の様にどれも従来の教室と大きく代わるものではなく、新たに揃える必要があるものでもありません。ましてやアクティブラーニング専用の教室や椅子などというものも存在しません。

  • 参加者(学生)
  • ファシリテーター(教員)
  • 配置を工夫した机、椅子、ホワイトボード
  • 事務局の協力(職員)

つまり、ハード面ではアクティブラーニングはどの学校でもすぐに導入できるものです。ちなみに、ICT教材は教材の幅が広がるという点において便利かもしれませんが、設備がないから出来ないと言うものではないと考えています。アクティブラーニングに臨む上で最も重要となるのは

  • 予習し議論に備える姿勢
  • 知識を主体的に学ぼうとする姿勢
  • 考えの異なる人と議論しようとする姿勢

といった、ハード面以外の部分。講義を創り上げるのは、大学でも教員でもなく学生自身です。これら3つがなければ、アクティブラーニングは成り立たないと言っても過言ではありません。

アクティブラーニングでの成績評価

大学の成績評価方法といえば、講義最終日に行われるテストやレポートの点数で、90点以上ならS、80点以上ならA・・・、というようにつけられることが一般的な認識かと思います。アクティブラーニングでは「授業貢献度」と呼ばれるものによって成績をつけることができます。「授業貢献度」とは、読んで字の如く「学生がどれくらい授業に貢献できたか」というものです。具体的にいうと、問いに対して的確な発言したり、講義を大きく展開させる内容や、新たな視点を発表した学生の評価は高くなります。発言回数が多かったからといって、評価が高くなるわけではありません。一方授業貢献度が低いというのは、講義に参加していないことが挙げられます。極端な話、毎回講義に出席していてもじっと座っているだけでは、評価の対象にならないということです。

アクティブラーニング実施の前に教員が準備すべき事

教員であれば誰もが陥りやすいのが「自分の教えている教科は特別」という思い込みこそがアクティブラーニングの導入を妨げてしまいます。次に陥りやすい罠が「グループワーク」を導入すればアクティブラーニング完了!という勘違いです。グループワークは事前学習を徹底するための自主的な場として運用した時にその効果が最大化することが知られており、グループワークはアクティブラーニング実施のための準備に過ぎません。グループワークにどんな課題を与えるのか、そして教員がどう関わるか、参加者にどこまでを求めるのか、これらはアクティブラーニングでの学びを左右する重要なポイントです。

アクティブラーニングの本番はグループワーク後に実施される全体討論で、そこでの最大の課題は「いかに意見を引き出すか?」に集約されます、要は質問力です。講師のファシリテーション能力が問われることは当然ですが、具体的には「質問する能力」が確実に問われるようになります。アクティブラーニング実施に必要な質問には大きく分けて3種類存在し、これらを組み合わせてクラスをファシリテーションしていきます。

  • 単純な質問(発言しやすい雰囲気づくり)
  • 課題への質問(事前に課題として提示)
  • 極端な質問(賛成か反対かなど、参加者に立場を決めさせる)
  • 深掘り質問(本質に迫っていくため)

アクティブラーニングに関する誤解

アクティブラーニングに対するよくある誤解に、以下の点が挙げられます。グループワークの実施は、アクティブラーニングの目標ではありません。参加者中心型の講義を行う上で、発言するために必要な「自信」や自分一人では気が付かなかった「視点」を得るための手段として講義前に実施されているのであって、「グループワークを実施した=アクティブラーニングを実施した」という主張は少しズレています。

  • グループワーク
  • レクチャー(講義)がない
  • IT装置が必要

また、アクティブラーニングにはレクチャー(講義)がないのでは?という点に関しては、欧米のビジネススクールでは、ケースという教材を利用してアクティブラーニングを実施しているのですが、講義の10%ほどの時間を割いて(多くの場合講義後半)議論の整理や先行研究の紹介など、クラス内の発言では出てこなかった視点の紹介などが講義形式で行われます。決定的なのが、IT装置(パソコンやモバイル端末)に関してで、アクティブラーニングが誕生したのは今から100年以上前の米国。教材の幅が広がるという点において便利かもしれませんが、設備がないから出来ないという訳ではないのです。

アクティブラーニングを成功させる秘訣

これは実際に大きな規模でアクティブラーニングを運営すれば明らかなことですが、アクティブラーニングは「教員」と「参加者」だけでは実施できません。というのも事務局(職員)のサポートが最大限求められるためです。大学教育においては教育と事務が明確に分離されていることが多く、どれだけ教員がアクティブラーニング導入に積極的でも、事務職がその価値を理解して、彼等からの積極的なサポートが得られなければ、絵に描いた餅で終わってしまうのです。

事実、講義時間、資料配布、事前課題、教室配置、成績評価、学生指導、など従来考えもしなかった工夫をアクティブラーニング導入において事務局が行わなければならない局面は必ず生じます。しかもその対応は、事務局がクラス内で一体どのような教育が行われているか理解しなければ、見当違いのサポートになってしまいますし、教員のモチベーションも下がってしまうでしょう。

むしろ事務局がクラス運営に対してリーダーシップを発揮し、教員とともにアクティブラーニングを導入する姿勢を持つくらいの積極性がなければ、高等教育を取り巻く文化は変化しないのです。

ではどうしたら良いのか?《想像の象》

皆さんは日光東照宮の想像の象をご存知でしょうか?江戸時代に日本にまだ象がいなかったために狩野探幽が想像で彫刻の下絵を描いたそうです。似てなくもないですが、この世の生き物とは思えない何かを感じます・・・。さて、アクティブラーニングを導入するのであれば、まず先進事例を自分の目で見るしかありません。想像から生まれるアクティブラーニングに頼っていると、想像で描いた象になってしまいとても危険です。もし興味があればいつでも遊びに来てください。



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