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アクティブラーニングで考えるリーダーシップ

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今回の北村貴先生による「政治学」では、小泉純一郎元首相のリーダーシップについて、アクティブラーニングを通じて学びました。一匹オオカミを貫き、永田町の変人と呼ばれた小泉純一郎元首相が、いかにして執政長官まで上り詰め、どのようなリーダーシップを発揮したのか。小泉内閣が発足した2001から内閣総理大臣を退任した2006年までをケースで読み、もし自分が小泉本人なら、あるいは小泉内閣に関与する議員なら、どのような行動に出るかということを考えました。(以下、敬称略)

「暗黙の条件」を打ち破った男

前回までの講義に習うと、1980年代以降の自民党では、影響力が強い派閥が支持する人物が総裁に選ばれていました。言わずもがな、派閥なくしては自民党での支持が得られませんでした。ところが、この暗黙の了解を打破した人物がいました。元内閣総理大臣である小泉純一郎です。自民党のどの派閥にも属さず、一匹オオカミな上に言いたいことをそのまま口にする小泉は、自民党内で変人と呼ばれ煙たがられていました。その小泉が主張していたのは、「郵政民営化」です。もともと国の事業である郵政事業を、民間企業に改編するというのです。当時、郵政事業は自民党の権益であったため、民営化することは自民党の誰もが嫌がりました。
小泉の挑戦は1995年の自民党総裁選から始まります。変人扱いの小泉は、投票者からの支持が得られず橋本龍太郎に大敗。その後1998年に行われた自民党総裁選でも、無派閥の梶山静六にまで敵わず負けてしまいました。
ここで学生に問います。いずれの総裁選も、郵政民営化を主張する小泉に勝ち目がないことは小泉自身も認識していました。では、出馬するメリットとは?
「変人が故にマスメディアに取り上げられ、知名度が上がる」
「小泉の掲げる政策を国民に強くアピールできる」
これらの意見を聞き、出馬せざるべきといった学生の声も挙がります。
「変人とマスメディアに囃し立てられ、国民にマイナスイメージを与えてしまう恐れがある」
「目立つことにより敵が増え、郵政民営化を反対する党員らに政策を阻まれる可能性がある」
小泉は出馬することにメリットを見出したため、負け戦であろうと総裁選に挑戦したのだと考えます。

小泉ブーム到来

1998年の自民党総裁選で総理大臣に選ばれた小渕恵三が急逝したため、急遽後継に森喜朗が選ばれました。数々の失言がメディアに取り上げられ、支持率も7%と記録的不人気となり、参議院選挙に備え森は自民党総裁を辞任しました。
さて、そうなると自民党総裁選です。2001年の選挙には橋本龍太郎、小泉純一郎、麻生太郎、亀井静香の4名が立候補しました。今回は各都道府県に3票与え、国会議員の票との合計で選出される仕組みです。国民の政治不信が高まる中、小泉は各都道府県を周り「古い自民党をぶっ壊して政治経済の構造改革を行う」とアピールしました。国民の期待を背負い、予備選では小泉が大勝。圧倒的な支持を誇りました。
なぜ2001年の総裁選挙において、一般自民党員の多くが小泉を支持したのでしょうか?
学生に意見を聞いてみます。
「森内閣時代に支持が凋落したため、小泉を選ぶことによってゼロからの再生を目指したかった」
「古い自民党の態勢に呆れ果て、この人なら改革をしてくれるのではないかと期待を集めた」
「話題性のある小泉を支持することにより、国民の支持が得られそうだから」
そして、その後に行われた自民党国会議員の投票の結果でも、小泉が票数を獲得し大勝しました。今まで自民党総裁選で大敗してきた小泉が、なぜここにきて自民党国会議員の多くの支持を得たのでしょうか?
「予備選の結果を見て、バンドワゴンに乗ったから」
「自民党の不満が増長し、改革派に寝返った議員が増えたから」
「国民から人気の高い小泉を支持することで、自身も国民からの支持が得られると感じたため」
学生から意見があったように、小泉人気に便乗し議員の多くは小泉に投票したのです。
かくして小泉内閣が誕生しました。

郵政民営化への道のり

新たに発足した小泉内閣は、今までの政界の風習を覆すような政治を執ります。まず、自民党内の改革反対派を「抵抗勢力」と位置づけ、政府との力関係を図りました。自民党とは協調せず、リーダーシップを発揮したのです。ではなぜ、今までの政治は与党を無視できなかったのでしょうか?
「与党の賛成が得られないと法律が成立しないから」
「内閣不信任案を出されるだけではなく、可決されてしまう恐れがあるから」
「与党の支持を失うと、政権担当能力がないとみなされてしまうから」
学生の言葉通り、本来の議院内閣制とは与党の信任の下にあるものです。ですが小泉は抵抗勢力を攻撃し、協調しようとはせず、着々と権力を行使しました。
さて、小泉の最大の目的は郵政民営化です。2004年に自らのリーダーシップにより「経済財政諮問会議」を開催し、思案を作成。2005年には郵政民営化法案の事前審査をし、自民党内で反対意見が続出しました。小泉は「説得せず、調整せず、妥協せず」と反対意見を無視して法案を提出。ところが、衆議院では賛成意見が上回ったものの、参議院では否決されてしまいました。そこで小泉は、衆議院を解散させてしまったのです。(郵政解散)ここで自民党分裂が起こります。なんと小泉は、郵政民営化に賛成する候補者のみを自民党の候補者として公認すると公言し、これによって反対者は新党結成もしくは無所属で立候補をせざるをえなくなりました。選挙の結果、小泉は大勝し、悲願の郵政民営化法案が成立しました。

リーダーシップとは

最後に、北村先生から学生に質問です。「小泉による郵政解散を、リーダーシップとして肯定的に評価、もしくは独裁として否定的に評価しますか?自らが小泉になったつもりで、理由を付して論じてください。」
学生はそれぞれ意見し、議論が飛び交います。
「自分の政策に賛成しない議員は認めず、権力を行使して弱みに付け込んだので否定的に評価する」
「最終的には自民党を一つにまとめ、郵政民営化を達成したので評価する」
「しかし自分の味方を増やすためだけに郵政解散・選挙をし、総理の権限を乱用したのは評価しない」
「それでもリーダーシップを持って民意を汲み取り、国民を引っ張っていったのは肯定する」
小泉の政治の執り方は、非常にセンセーショナルであり、テクニックもしくは独裁とも捉えられます。人により感じ方は違えど、小泉は今までにない強いリーダーシップを確かに発揮しました。議院内閣制の中で、国民の意見を尊重した大統領型の政治を執り、自民党は逆らうほど抵抗勢力とみなされ為す術もありませんでした。
リーダーシップと独裁は紙一重で、バランスが難しいと言われます。小泉は、飾り物の総理大臣を置いていた政府の救世主だったのでしょうか。周りの意見を汲み取り、且つ決断を下す。リーダーシップとは何かということを、小泉純一郎の事例をもとに考えた講義となりました。



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